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小さなえほんとしょかん―ゆめのたね―

小さなえほんとしょかん―ゆめのたね―

晴雨計(第9~11回)

新潟日報 夕刊コラム『晴雨計』第9回 2008.6.26(木)
なわとびと思いやりと


 「98、99、100、101」
 ピピーッ! 100を過ぎたところで、終了の笛が鳴った。
 先日、次女(小2)の小学校で行われた「一日学習参観」の1時間目は「全校大縄跳び大会」だった。1~6年生の児童が各学年数人ずつ均等に10班に分かれ(先生も一人ずつつく)、3分間、2回跳んでその合計数を競う。次女の班の1回目の記録は101回だ。
 この大縄跳び大会は、昨年から年3回に増え、上位に入るとトロフィーや賞状がもらえる、児童会の目玉行事になった。
 一週間以上も前から、朝や休み時間に各班集まって作戦を練ったり、練習を積んだりして本番を迎える。高学年(あるいは運動神経のいい子)には、何てこともない大縄が、低学年の子にとっては、入るタイミングがつかめず、ドキドキするものだ。そこを上手にリードするのが、上級生の役目。
 縄跳びにちなんで、今日のおすすめはきつねのかみさま(作・あまんきみこ、絵・酒井駒子、ポプラ社)という絵本。
 あまんさんの文章は、国語の教科書でもおなじみで、どこかせつないイメージがあるけれど、女の子(りえ)の柔らかい口調で語られるこれは、ほんわか。どこまでもあったかい。酒井さんの上品で美しい絵もピッタリ!
 ―りえが弟のけんちゃんと、公園に忘れたなわとびを取りに行くと、きつねたちが大縄をしているのに出くわす。うまく跳べるコツを教え、いっしょに夕方まで遊ぶ。自分のなわとびだと勘違いしているきつねの子を思い、りえはなわとびをおいて帰る―。
 幼い姉弟(きょうだい)の会話、きつねたちとのやりとりすべてが思いやりにあふれ、優しい気持ちでいっぱいになる。ラストに、タイトルの秘密がわかり、なるほどと感心してしまう。
 さて、次女たちの2回目の記録は93回で合計194回。200回以上跳んだ班があったため、惜しくも第2位だった。それでも、上級生が、絶妙のタイミングで、1年生の背中を優しく押してやり、失敗してもドンマイ。成功すると、自分のことのように喜んでいる姿に、ジーンとなった。

新潟日報 夕刊コラム『晴雨計』第10回 2008.7.3(木)
おまんたみんな おらんちの子


 「あ、上松さんだ!」
 学校はもちろん、道端やスーパーで会っても、子どもたちが声をかけてくれる。
 次女(小2)の入学を機に、前々からやってみたいと思っていた小学校での絵本読みのボランティアを始めて、1年が過ぎた。週1~2回、朝読書の時間(始業前の15分間)に、各教室へ(今日は1年生、明日は2年生…というように)行って絵本を数冊読んでくる。
 講習を受けたこともなく、まったく自己流の読み方だし、時には失敗もする。それでも「おもしろかったー!」「また来てね」なんて、キラキラした瞳で言ってくれる子がいると、次もはりきってしまう。
 絵本を通して、学校中の子どもたちと触れ合える私は、とても幸せ者だと思う。
 我が子だけでなく、よその子にも、温かい愛情を注げるお母さん=私の理想のお母さん像が登場する、とっておきの絵本がある。ふんふんなんだかいいにおい(作・にしまきかやこ、こぐま社)という絵本だ。
 ―さっちゃんは野原へ、お母さんの誕生日にあげるお花を摘みに行く。その途中、出会った動物たち(きつね、くま、おおかみ)に、おいしそうなにおいがするから、おまえをちょっと食べさせろと言われ…!?
 動物たちとさっちゃんとの、テンポのよい会話が可笑しくドッと笑える前半。一方、「母さん、おれの小さい時死んじゃったんだよー」と泣き出したおおかみに、さっちゃんとお母さんが見せた優しさと気遣い。心の中がじーんとなるラストシーンが最高!
 そうそう。息子の野球でも、娘たちのバレーボールでも、「○○行けー!」「いいぞ!△△」―熱くなった母ちゃんたちは、自分の子だろうと、よその子だろうと、かまわず呼び捨てで黄色い声援を送る。後で「おまんたみんな、おらんちの子みたいなもんだ」と口々に言う。東京出身の私が、上越で覚えた大好きな言葉ナンバーワンだ!
 青少年が引き起こす悲惨な事件が報道される度、我が子のように声をかけ見守ってくれる大人が、周りに一人もいなかったのだろうか?と、苦しくなる。

新潟日報 夕刊コラム『晴雨計』第11回 2008.7.10(木)
父からもらった最高の贈り物


 ―夏の太陽の下、習志野の野は蓊々と繁る草たちの饗宴。(中略)野は生命力の源泉。この季(とき)この地に生を授かった、あの乳白色の陶器にも似た清潔な香りを〈志野〉と呼ぼう。        父志るす―

 母が産院でもらった育児日記の、古ぼけた表紙をめくると、いかにも芸術家らしい父の個性的な文字が、目に飛び込んでくる。
 「志を抱いて、野の草のようにスクスク伸びてほしい」そんな願いを込めて、まだ若かりし(二十七歳!)なりたてホヤホヤの父親が一生懸命考えてつけてくれた、私の名前。
 今でこそ、「素敵なお名前ね」と言われる度に笑顔で頷けるが、子どもの頃は、時代劇に出てくるような古風な名前が、何だか気恥ずかしくて嫌だった。当時は○子や△美が主流だったからね。
 繊細な画家で、豪快な酒飲みで、キザで気分屋で、近寄り難い存在だった父。7年前、食道癌(がん)のため、62歳で他界した。とうとう最期まで本音で語り合えなかったのが、唯一の心残りだ。
 命名にちなんで、今日のおすすめはねこのなまえ(作・いとうひろし、徳間書店)という絵本。
 ―散歩の途中、のらねこに声をかけられたさっちゃん。無視して通り過ぎようとすると、ねこは真剣な顔で、名前がないのでつけてほしいと頼みます。仕方なく名前をつけてやることにしたさっちゃんは…!?―
 のらねことさっちゃんの軽快な会話に、くすっとか、ぐふふとか笑っているうちに…いつの間にか、名前の大切さ=名前に込められた想いに気付き、心の中がじーんと熱くなっている展開がみごと!
 さて、あさって12日は、私の43歳のバースディー。生んでくれた母、素敵な名前をつけてくれた父。育ててくれた両親と支えてくれる家族に、あらためて感謝の気持ちを表す日だ!
 天国の父へ。最高の贈り物をありがとう。まだまだスクスク伸びて、いつかあなたに届きたいな。












 



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